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Web行動心理学研究所は、ディスプレイ広告のパフォーマンスを向上させるため、株式会社インフォデックスが外部有識者の皆さんと共に運営している研究チームです。 ユーザーがWeb広告と接触して反応する際の「行動心理」について、基礎的な研究やテスト配信に基づいたデータの蓄積~公開を行っています。 ブログでは、マーケティングや広告制作に活用できそうな行動心理の紹介や、行動心理を適用したバナーを実際に広告配信をして広告効果を検証したレポートなどを掲載しています。

ポケモンGO熱狂の背景 「遊びの基本要素」から魅力を探る

四元正弘 お役立ち 行動心理

ポケモンGO熱狂の背景 「遊びの基本要素」から魅力を探る

ポケモンGOが大変な人気だ。ピークは超えたようなので、「だった」と過去形にすべきなのかもしれないが、「ポケモンの巣」と称される公園等には今でも多くのプレイヤーがうろうろしている。オッサンの私も見事にはまってしまいました(笑)。

さて、フランスの社会学者/哲学者ロジェ・カイヨワ(1913-1978) によると、遊びには以下の4つの基本要素があるという。

競争:他人と優劣を競う。競走、各種レースなど
偶然:運に左右され、思うようにならない。くじ、じゃんけん、ルーレットなど
模倣:真似をしたり、成り切ったりする。ものまね、歌マネ、ママゴトなど
眩暈:意識や知覚が攪乱される。ブランコ、ジェットコースターなど

このカイヨワの視点で改めてポケモンGOを考えると、見事に四要素が詰まっていることがわかる。

※『ホモ・ルーデンス 人類文化と遊戯』を著したホイジンガ(1872-1945)と並んで、遊びを真面目に研究した第一人者。一般的にホイジンガの継承者と目されており、その著書『遊びと人間』において遊びの定義や分類など踏み込んだ考察を展開した。肩書は社会学者や哲学者のほかにも、文学者、ジャーナリスト、翻訳家など多彩であり、心理学に対してもかなりの造詣があったようだ。

ポケモンGOに含まれる「遊びの四要素」とは?

①競争性

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まずは「競争」だが、自分のポケモンを進化や強化させて、ジムの覇権をかけて他者のポケモンと戦う点が挙げられる。
また、トレーナーレベルや珍しいポケモンの獲得を家族や友人同士で自慢し合うことも、多分に競争的だと言えよう。

②偶然性

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そして、次の「偶然」こそポケモンGOの真骨頂だ。どこにポケモンが潜んでいるか判然としないので、ともかく動き回らなくてはいけない。
一応近くに居るポケモンを教えてくれるが、実際に出会えるかどうかは運任せ。しかも、レアなポケモンに会う確率は相当低いし、捕獲中に逃げられる不運もたびたび起きる。

③模倣性

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また、プレイヤーはハンターに成り切ってポケモンの世界観にどっぷり浸るわけだが、これぞまさしく「模倣」そのものだ。
既存の人気コンテンツを下敷きにしたことで実現したこの模倣感は、デジタルビジネスの新境地を拓いたように思う。今後は、ドラクエGOやドラえもんGO、スーパーマリオGOなども次々と登場してくる予感がしてならない。

④眩暈性

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捕獲時にARモードにすると、見慣れている風景の中に出現したポケモンにボールを投じてゲットする流れになる。

ある記事では、プレイしていた幼児が「パパ、ポケモンって本当に居たんだね!」と叫んだエピソードを紹介していたが、とても素直な感想だと思う。日常的な空間とポケモンの空間がまるで融合したかのような印象、さらに言えば、自分がいるのは現実世界なのか架空世界なのか判然としなくなる感覚を私も覚えるが、これぞまさしくカイヨワが説く「眩暈」でなくて何であろう。

前記のような強い模倣性があるからこそ現実とポケモンの融合が生まれるのだろうが、そこにポケモンGOの凄さの本質があるように感じる。

ポケモンGOは歴史に残る偉大なゲームか?

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以上のように考えると、ポケモンGOは歴史に残る偉大なゲームだと驚嘆する。なんせ、カイヨワが見出した遊びの基本要素の全てが、高いレベルで具現化しているのだから。

そのうえで、カイヨワの定義には出てこないが、他者との「絆」も遊びにとって非常に重要な要素だと私は考えたい。どうやらカイヨワは一人遊びに主眼を置いたようだが、一人よりも仲間と一緒の方が楽しいと思うのは誰だって同じだろう。カイヨワに文句を付けるなんて身の程知らずと怒られそうだが、私としては遊びの基本要素として「絆」も是非とも追加したい所以である。

そして、その点においてもポケモンGOはバッチリ合格だ。
心理学では類似性を感じる対象を無意識に高く評価する傾向が知られており、相手の仕草を鏡に映すがごとく真似る手法「ミラーリング」が有名だが、ポケモンの巣に出向けば全員がスマホ片手にウロウロしたり、シュッと指をスライドしたり。皆が同じ動作をしている様子は、まさしくミラーリング効果の乱れ咲き。

「こんなにいるいる、老若男女の御同輩が」と思うだけで、日常生活ではなかなか味わえない他者との絆や地域コミュニティとの一体感を感じてしまって、不覚にも目頭がちょいと熱くなった。

きっと、テレビ黎明期に設置された街頭テレビに群がった大衆も、同じコンテンツで楽しみ、言葉を交わさずとも「今ともにここにいる喜び」を共感したのだろうなぁ、なんてことも唐突に連想してしまった。

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さて、米国では今世紀に社会に出た若者をミレニアル世代と呼ぶが、彼らはかつてないほど格差問題に直面しており、米国大統領選では格差是正を訴えたサンダース氏に熱狂した。彼らの意識や価値観は今や先進国すべての若者で共通しており、日本も例外ではない。

奇しくもそのミレニアル世代が子供の頃に熱中したのがポケモンであり、彼らが中心になって開発されたのがポケモンGO。これは単なる偶然だろうか。
そして、ポケモンGOが作り出す絆の向こうに、格差無き理想郷を予感したいと願うのは私だけだろうか。

ブームは必ず去る。だがポケモンGOの熱気は何かの形で、社会やデジタルビジネスに引き継がれるように思えてならない。


この記事の作者

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四元マーケティングデザイン研究室
代表 四元正弘

1960年神奈川県生まれ。東京大学工学部卒業。
サントリー(株)でワイン・プラント設計に従事し、発明協会賞を受賞。
1987年に電通に転職。メディアビジネスの調査研究やコンサルティング、消費者心理分析に従事する傍らで筑波大学大学院客員准教授も兼任。2013年3月に電通を退職し独立、現在は四元マーケティング研究室代表を務める。


・プロフィール
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