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魔法の言葉は【リフレーミング】大坂なおみのコーチ、サーシャ・ベイジン 

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テニスの大坂なおみ選手が、全米オープンテニスで優勝しました。全米オープンテニスは、グランドスラムと呼ばれる4大大会の一つで、グランドスラムで優勝するのは日本人初の快挙です。なぜ大坂なおみ選手が短期間で強くなったのか、それはサーシャ・ベイジンコーチのおかげだといいます。彼の行ってきたことをトレースすると、そこには、リフレーミングがあると確信しました。

良いコーチは必ずしも、良い選手である必要はない

彼女の現在のコーチはサーシャ・ベイジンという著名なコーチです。
ベイジン氏は、今回対戦したセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)をはじめとするビッグネームのコーチを務めてきました。彼は選手時代には、あまり活躍することなく選手活動は終了しましたが、コーチになり才能を開花させたのでした。そして今年に入り、全米オープンテニスで優勝したことや大坂なおみの快進撃68位から7位まで上げたのもサーシャ・ベイジンコーチのおかげでもありました。
つまり、良いコーチは必ずしも良い選手である必要はないということです。

殻を突き破るリフレーミング

フレームとは「枠」のことです。自分自身に作ってしまった限界や思考範囲です。そして、リフレーミングはその枠を取り壊して作り直すことです。またこれを会話で行うスキルです。

以前大坂選手にはメンタルの弱さが指摘されていました。
2016全米オープンミスが連発してパニックになり敗退
2017全米オープン格下相手に最終セットまでもつれ込み自滅して敗退
大坂選手は自分の性格を、「私は完全主義者で、自分の中から出てくるプレッシャーやフラストレーションでうまくいかないときもある。今は、何をすべきかわかっている気がする。何より我慢強く戦うことが必要だと思った」と述べています。
サーシャ・コーチはプレッシャーやフラストレーションを抑え、自信を持たせるために、リフレーミングを行ったのではないかと考えられます。彼がリフレーミングについて認識しているかどうかはわかりませんが、コーチングはリフレーミングそのものです。

自信を回復させるリフレーミングの方法

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次のやり取りは、今年3月のBNPパリバオープンでの出来事です。テレビでも流れていることですから、読者もご存知の方も多いと思います。状況は大坂選手が自分自身のプレイに納得せず、イライラしていました。

サーシャ・コーチ「どうかした?何にイライラしているの?」
大坂選手「全部」
サーシャ・コーチ「僕は、よくやっていると思うよ」
大坂選手「私は、そうは思わないわ」
サーシャ・コーチ「なおみならできるよ」
大坂選手「たまたま続けて悪いゲームだっただけさ。何も悪いことは起きていないよ」

ここでも、サーシャ・コーチが大坂選手の自信回復を図ろうとしています。

サーシャ・コーチのコーチングは次のように激励しています。
不調を訴えた時に、「世界一位から1セット取ったんだよ」
「僕はセリーナのボールを8年間受けてきた。その僕が言うのだから間違いない。君と打ち合える女子選手は存在しない。」(テニス専門誌「スマッシュ」)
試合前のアドバイス「ポジティブになれ。人生はこんなに楽しい。天気もいい。さあ集中しろ。君ならできる。君は間違っていない。君は素晴らしい。」(「テニスマガジン」6月号)

このような、サーシャ・コーチの発言を見ていると、大坂選手の自信を回復させようとしています。つまり、「自信の喪失=自分の限界」という枠を壊して、自信を回復させるリフレーミングを行っていることがわかります。

大坂選手によるリフレーミング

大坂選手の優勝挨拶は観客のブーイングの中で始まりました。「みんなセリーナを応援していたのは分かっています。こんな結果になってごめんなさい」と述べています。
大坂選手にとって、セリーナ選手は憧れの存在でした。その彼女と対戦して、試合終了後にハグした時には、セリーナ選手に憧れていた昔の自分に戻ったといいます。そこで、自然に隣のセリーナにおじぎをして「対戦してくれてありがとう」とリスペクトの気持ちを伝えたのでした。
この言動そして涙が、ブーイングを続けてきた観衆の心をリフレーミングしてしまったのでしょう。

リフレーミングのマーケティング利用

筆者が印刷機械メーカーのマーケティング責任者であった時、環境対策についてのミッションがありましたが、それまで、環境対策はコストが大きいというのが常識でした。
印刷は、印刷機を回しながら各種の調整をします。そうすると、100枚の製品を作るためにでも、200枚分もの印刷用紙とインキが無駄になっていました。資源の無駄遣いです。
これに対して、同社は、無駄になる印刷用紙を10枚に減らすシステムを開発していました。そこで、筆者が考えたキャッチコピーが「エコロジー&エコノミー」でした。
環境対策はコストがかかるというフレームを環境対応はコスト削減になるというリフレーミングを行ったのでした。

まとめ

以上のように、マーケティングでもリフレーミングを行うことで、まったく展開が変わることがあります。本来、リフレーミングは、対人関係に使用するスキルですが、広告やマーケティングにも応用することができるのです。マーケターも近視眼的になりがちですが、ぜひ、視点を変えてリフレーミングしてみてください。


この記事の作者

合同会社メンタルナビの代表社員
日本心理学会認定心理士
村田芳実

1975年、生命保険会社入社。広報責任者や支社長を歴任。
1997年10月、株式会社小森コーポレーション(一部上場印刷機メーカー)に転職。
広報・マーケティング部門を立ち上げ、情報誌の編集長として企画・取材・執筆を担当し、ユーザー会の事務局長として、企画・運営を担当。当時、セブン-イレブンの鈴木社長に出会い、「心理学」について影響を受けた。そして、会社から、ブランディングや顧客満足のミッションを受け、放送大学に入学し心理学を学び、日本心理学会認定心理士資格を取得。
心理学のマーケティングへの活用に成功したことから、現在は、ビジネス心理学を提唱。書籍やWebサイト記事の執筆、化粧品会社の記事監修も行っている。

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