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バーナム効果で自分ごと化を促して、強いブランドになる  ~「物語×マーケティング」戦略のすすめ

株式会社インフォデックス"

私は四年前から青森で暮らしているが、観光地にはとんと縁が無い。
そこへ友人が購入ほやほやの新車で青森を訪ねてきてマグロの一本釣りで有名な大間に行きたいと言うので、この秋にはじめて其処を訪れた。


大ヒット曲「津軽海峡冬景色」に「竜飛岬、北のはずれと指を指す」という下りがあるためか誤解されがちだが、下北半島・大間町の大間崎という岬が本州最北端。実際に訪れると、閑散として北の最果てというイメージがぴったりだった。

しかし地域ブランドの観点では、最も成功した地域だと言ってよいだろう。なにせ青森初訪問の人が行きたい先に単独指名するくらいなのだから・・・。というのは半分冗談として、今では築地市場の初セリで大間マグロに高値がつく様子が正月の風物詩となっているのは紛れもない事実だ。

そのようにほぼ国民全員が注目する地域由来のビッグな出来事やトピックスが、他にどれくらい存在するだろうか。大間マグロは、まさに地域ブランドの代表格、トップスターだと断言してよかろう。



とは言え、大間マグロが世に知られるようになったのはここ数十年のこと。まずは映画「魚影の群れ」(1983年)やNHK連続ドラマ「私の青空」(2000年)などを通じて豪快なマグロ漁が一般的に知られるようになり、その後も漁師たちの孤軍奮闘ぶりがドキュメンタリー等でたびたび取り上げられているうちにそのブランド力はますます高まってきた。

青森、大間のマグロの魅力

では、そのブランド力の源泉は一体何だろうか? 言い換えると大間マグロの何が、そのほどに人を魅了するのであろうか? 

私が考えるに、もちろん高品質や希少性によるところも大きいが、それにも増して大間マグロを取り巻く「感動的な物語」がより重要な役割を果たしているように思えてならない。主役である漁師本人はもちろん、彼らを支える家族や流通関係者、寿司業界大手など大間マグロに関わる大勢の苦悩や歓喜に共感できるから、その物語に触れた人々の感情を揺さぶるのだろう。


先ほどブランド化の過程を映画から始めたが、実はその前段がある。小説「戦艦武蔵」の著者として知られる吉村昭氏が1973年に文芸誌上で発表した一片の短編小説が大間マグロを世に出すきかっけとなった。その後、その短編はジワジワと評判を呼び、やがて緒方健、夏目雅子、佐藤浩一らが出演して大ヒットする映画「魚影の群れ」が生まれた。

当時の吉村氏は厳しい自然と対峙する人物像に関心があり、全国を取材して回る中で大間のマグロ漁師と出会い、その生き様に魅了されたそうだ。まさに大間マグロのブランド化の原点は「これを書きたい」と一流作家を感動させた物語性にあったわけである。

「物語」はマーケティングにとっても有効

さて、物語という切り口は、マーケティングにも大変に有意義だと思われる。情報の質が販売に直結する通販であればなおさらだ。
なのでここからは「物語×マーケティング」を考えてみたいのだが、まずはみなさん、「バーナム効果」と言われる概念をご存知だろうか。バーナム効果とは、誰にでも当てはまるような内容の情報や曖昧な表現を自分にピッタリ当たっていると思わせる究極の心理操作のことで、星座・血液型の性格判断や運勢占いが代表的だ。

バーナム効果

ポール・ミールという心理学者が名付け親だが、その由来となっているのはバーナムという実在した大物興行師かつ稀代の詐欺師。あのマイケルジャクソンもバーナムの伝記を愛読していたことでも知られている。
今週のお題「ゲン担ぎ」


そして最近では、マーケティングの重要な概念として「自分ごと化」がよく挙げられるが、これは「この商品は自分にとってピッタリ/特別な存在/必要不可欠・・」と消費者が実感している状態を意味する。そのうえで、自分ごと化の対象になっている商品や企業を「ブランド」と見なすこともできる。

そう、自分ごと化の本質は「自分にピッタリ」感であり、それはバーナム効果も全く同じこと。すなわち実質的に「自分ごと化=ブランド化=バーナム効果」であり、この実現こそがマーケティングの究極ゴールなのである。


そして、バーナム効果は次のような条件を満たす場合に、より効果を発揮することが心理学研究でわかっている。
・対象者が自分に適合すると感じている
・前向きな内容である
・対象者が相手の権威を信じている


これを「物語×マーケティング」の視点で読み替えると、以下のように変換できよう。
・消費者が自分を重ねられて共感できる主人公が登場する
・物語の内容が前向きである
・登場する商品や企業、キャラクターに一流感や信頼感、安心感がある

魅力的な「大間のマグロ物語」

そう考えると、まさに大間マグロを題材とした一流作家の小説、豪華キャストの映画、NHKの朝の顔である連続ドラマ、漁師の不屈の精神を描いたいくつものドキュメンタリー番組などで複層的に展開された大間マグロの物語が自然とバーナム効果を発揮して、大間マグロの自分ごと化を促進するとともに、結果的に大間マグロを有名ブランドに押し上げた、という図式が見えてくる。


翻って多数の商品がネット通販の上でひしめき競い合う今日、これまで以上に差別化が求められるようになっている。
もちろん高品質やユニークさは重要な差別化ポイントだが、その競争力を維持するためには不断の努力が求められ、ハッキリ言って企業も苦しかろう。

しかも、いくら高品質を求めたところで、ブランドになれる保証はない。いや、それどころか様々なマーケティング的検証から、高品質化とブランド化は関係が薄いことが指摘されている。

だからこそ、バーナム効果を上手に活かして自分ごと化やブランド化を目指す「物語×マーケティング」戦略に注目してほしい。大間マグロのブランド化事例とそれにまつわる上記エピソードが、その有用性を如実に語っているのではなかろうか。

この記事の作者

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四元マーケティングデザイン研究室
代表 四元正弘

1960年神奈川県生まれ。東京大学工学部卒業。
サントリー(株)でワイン・プラント設計に従事し、発明協会賞を受賞。
1987年に電通に転職。メディアビジネスの調査研究やコンサルティング、消費者心理分析に従事する傍らで筑波大学大学院客員准教授も兼任。2013年3月に電通を退職し独立、現在は四元マーケティング研究室代表を務める。


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