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Web行動心理学研究所は、ディスプレイ広告のパフォーマンスを向上させるため、株式会社インフォデックスが外部有識者の皆さんと共に運営している研究チームです。 ユーザーがWeb広告と接触して反応する際の「行動心理」について、基礎的な研究やテスト配信に基づいたデータの蓄積~公開を行っています。 ブログでは、マーケティングや広告制作に活用できそうな行動心理の紹介や、行動心理を適用したバナーを実際に広告配信をして広告効果を検証したレポートなどを掲載しています。

【偶然性で魅了するマーケティング戦略】人は常に正当化の理由付けをしている


株式会社インフォデックス"

「タバコは体に悪いと知っているのに、禁煙できない」
心理学ではこのような状況を「不協和」と呼び、葛藤や不安の原因となる。そこで人は考え方や行動を変えることで不協和の解消を図ろうとする。

上記の例だと「禁煙する」が正統派の解消方法なのだが、実行できない人も多い。そこで禁煙できない場合は、「ストレス解消にタバコは有効」などと自身を納得させて不協和を解消する。

これが心理学で有名な「認知的不協和理論」なのだが、このように人は自分を正当化するための理由付けを常に試みているといっても過言ではない。

そして今回注目したいのが、見慣れないものを目にしたときなどに抱く「“いつもと違う”という違和感」を覚えたときの理由付けである。

元来的に人は違和感が大嫌い。違和感を覚えると不安になって、行動を躊躇するものだ。※
しかし、時には違和感が素敵な物語の起点になることもある。まずは以下のケースを想像してほしい。あなたはこんな経験をしたことがないだろうか?

※ 原始人のころから猛獣や天災のリスクに晒され続けたことが、この習性を生んだとされている。

場所は出張先のホテルのロビー。卒業後は長年会っていなかった同級生と、偶然にバッタリと遭遇した。ホント、凄い奇遇で、相手もビックリしている様子・・・

こういう場合、大半の人は疎遠だった相手を急に親友のように思えて、食事に誘ったり連絡先を交換したりするものである。もしもこれが男女なら、最後は結婚したりして(笑)。

少女漫画でよくある、転向初日に交差点で派手に主人公同士がぶつかってしまう場面も基本的には同じこと。でも、それは何故なのだろうか?

「これは運命!」人間は無意識にそう感じてしまう。

前記したように、人は常に正当化の理由付けをしようとしている。常識的には想定できない違和感タップリの現状に対しても、そうだ。「この特別な状況には自分ではわからない特別な意味があるはず」という理由で正当化したうえで、相手に運命的な何か大きな価値を無意識に感じてしまっているのである。

そこで、心理的アプローチのマーケティングとしては、通常では考えにくい偶然性をさりげなく演出することで、対象の価値を無意識に高く感じてもらう戦略が面白い。

その意味で紹介したいのが、日本航空が2016年12月から始めた「どこかにマイル」だ。

貯まったマイルを無料チケットに交換するサービスはすでにお馴染みだが、「どこかにマイル」の場合はまず日時を入力すると4か所の行き先空港候補がランダムに表示され、あとは行き先を選択することなく申し込むだけ。

すると、3日以内に四候補のうち一つの行き先が通知される。行き先は運任せだが、ゲーム的な遊び感覚も味わえて、しかも規定の半分のマイル数で済むのが魅力だ。

同社によると一か月半の間に一万人の申し込みがあったほど想定外の好評ぶりだそうで、現時点では羽田空港発着の国内線だけだが拡大されるのも時間の問題だろう。

通常の旅行ではまず行先が決まっているものだが、これはその常識をぶち壊した発想で新規需要を創造する、まさに革新的商品だと言えよう。

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出典:日本航空HP

行き先が決まっていないことに批判的な人ももちろんいるだろう。そりゃ、出張や帰省には絶対に使えない(笑)。
しかし「どこでもマイル」だからこそ、むしろ旅の感動は大きくなるかもしれないという可能性に着目していただきたい。「特別な状況には特別な意味があるはず」と理由付けを無意識にすることによって、行き先の地域を「自分にとって特別なところ」と感じる(あるいは錯覚する)人が少なくないからだ。

その結果、旅の余韻もひとしお深まって、その地を再来する人も現れよう。地域にとってもありがたい話である。

以前、ロジェカイヨワが定義した「遊びの基本要素」の一つに偶然性があることを紹介した。実際に付加価値向上の一助としてガリガリ君の当たり棒のように偶然性を取り入れることはそう珍しくないが、「どこかにマイル」のように偶然性を商品の基幹に置く、換言すれば偶然性そのものを商品化することはまさに発想の大転換だ。しかも大成功とあっては大変に素晴らしい!!

そして、その成功の背景には「特別な状況には特別な意味があるはず」という理由付けが無意識にされていることにも是非留意していただきたい。

単純に偶然性を取り入れれば、その商品やキャンペーンが成功するわけでは全くない。それどころか、偶然性を「外れるリスク」として認識されたら、むしろ消費者を遠ざけることになろう。

「特別な意味を感じさせる偶然性」でなくてはいけないのである。




この記事の作者

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四元マーケティングデザイン研究室
代表 四元正弘

1960年神奈川県生まれ。東京大学工学部卒業。
サントリー(株)でワイン・プラント設計に従事し、発明協会賞を受賞。
1987年に電通に転職。メディアビジネスの調査研究やコンサルティング、消費者心理分析に従事する傍らで筑波大学大学院客員准教授も兼任。2013年3月に電通を退職し独立、現在は四元マーケティング研究室代表を務める。


・プロフィール
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